ーー障害者グループホームの扉を押し開けると、静かな生活の営みの奥に、見えない渦が渦巻いているのを感じる。
入居者の笑顔という光の影で、職員の苛立ち・怒り・疲労の暗雲が揺らめき、時折、人格を否定する言葉となり、渦を巻く。
私は、毎月、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム等を10カ所以上巡っている。
しかし、障害者グループホーム程、目に見えぬ渦が、空気を支配する場所はない。
ケアマネジャーに「障害分野に興味はないか?」と聞くと「障害者は怖いから、無理。」と返ってくる。
勿論、障害者が怖い一面がある事は否定出来ない。
しかし、障害福祉の現場を10年以上観察してきた立場からすると、その恐怖の光景は、障害者自身というよりも、感情のままに動き常識を欠いた職員に由来している。
この渦は簡単には消えず、気付かぬうちに、現場の空気を覆いつくす。
今日は、この渦を紐解いていきたいーー。
♦ブラックボックスとは、隠している場所のことではない。正しさを疑う人間がいなくなった場所のことである
家族も、外部の支援者も入りにくい「閉ざされた空間」では「空気は留まると濁る」の如く、支配的な支援や人格否定が、知らぬ間に常態化していきます。
障害者グループホームという名前からは、家庭的で温かいイメージが浮かびます。
しかし、実際には「外から見えない空間(ブラックボックス化)」である事が、少なくありません。
家族も、外部の支援者も、容易に出入り出来ない。
否、出入りをしたとしても、歓迎されていないという微妙な空気を感じ取り「もう来たくない」という気持ちになります。
そこでは、職員の裁量が強く「閉ざされた空間」の中で、支援のルールや日常の判断が固定化されます。
法人の監査機能も機能していない事が多く、利用者の人格や希望、家族の希望、相談支援専門員の専門的な見地等は、後回しになります。
結果として「閉ざされた空間」の中で、支配的な支援や人格否定が、当然の事として温存されていきます。
外から見えないからこそ、障害者グループホームのブラックボックス化は、今日も知られざるまま広がっていきます。
ー人の出入りが少ない組織程、問題が起きないのではない。問題を指摘する人がいなくなるのであるー
ーー私は、毎月、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム等を10カ所以上巡っている。
しかし、障害者グループホーム程、目に見えぬ渦が、空気を支配する場所はないーー。
| レイヤー | 障害者グループホーム(GH) | 介護保険施設(CF) |
|---|---|---|
| 制度 | 安全・生活維持優先、人格尊重弱い | 自立支援・利用者主体重視 |
| 法人 | 現場裁量集中、情報閉鎖、越権放置 | 外部監査・透明性確保、越権抑制 |
| 職員心理 | 支配的・越権行為、人格否定温存 | 支配抑制、教育整備、心理的安全確保 |
| 利用者心理 | 無力感・自己決定感低下、支配構造 | 自己決定感維持、支配関係弱い |
| ブラックボックス化 | 高い:情報閉鎖+裁量集中+越権行為 | 低い:透明性+監査+教育で抑制 |
障害者グループホームと、介護保険施設の違いの1つに「外部の人の出入りの多さ」があります。
介護保険施設では、家族・ケアマネジャー・訪問診療・福祉用具専門相談員等、多くの関係者が日常的に出入りします。
その為、自然と第三者の目が入り、支援の透明性が保たれる構造があります。
良くも悪くも「見られている環境」にあるのです。
私は、この構造は、在宅においても、大切であると考えています。
訪問介護(ヘルパー)・訪問看護・通所介護(デイサービス)・ケアマネジャー等が入る意味の半分は、自然と第三者の目が入る構造にあると感じています。
これに対し、障害者グループホームでは、支援の多くがグループホーム職員の中で完結する事が多く、外部の関係者の出入りも殆どありません。
その結果、支援自体が外から見えず、問題のある支援も、内部に留まりやすい構造にあります。
空気と同じように、環境も循環をしなければ、淀みます。
他者の出入りがあるという事は、単なる形式等ではなく、支援の質を保つ為の「自然な換気」の役割を持っているのです。
ー支援が支配に変わる組織は、支援を変えず、違和感を口にした人間の方を変えようとするー
ーー支援は、閉じた場所では、形を変える。
見られなくなった支援は、やがて、正しさをまとった支配になる。
空気は留まると、濁る。
支援もまた、風が通らなければ、濁っていく。
だからこそ必要なのは、外からの視点という風なのだと思うーー。
皮肉な事に、その空気の濁りに最も気付かないのは、そこに長くいる職員です。
越権行為さえも「本人の為」と言い、外から風を伝えようとすると「あなたを変えます。」等と言いいます。
ーー支援を変えようとするのではなく、声を上げた人間の方を変えようとする時、ブラックボックスは完成します。