伝説とは奇跡の瞬間ではなく、諦めなかった時間のことを呼ぶ3ー完璧なドラマの続編、リオネル・メッシ





 ーー少年は、世界一の選手になった。

 けれど、それ以上に難しかったのは、1人の大人の男になることだったかもしれない。



 少年は、内向的だった。

 人前で話すことより、静かな場所でボールを蹴ることを愛していた。


 歓声は、好きだった。

 でも、注目されることは苦手だった。



 だから彼は、左足で、語っていた。

 1本のドリブル。1本のパス。1本のシュート。


 
 それが少年の言葉だったーー。







  ー彼は、知っていた。物語は、失敗した場所では終わらない。もう1度前を向いた場所から、新しい物語が始まることをー



 39歳になった少年は、PKを外しましたーー。


   ★世界最高の選手でも、失敗する

   ☆神と呼ばれた男でも、失敗する

   ★39歳になった男でも、失敗する


 ーーそれが、サッカーです。




 スタジアムには、一瞬だけ静寂が訪れます。

 しかし、彼はーー


    ☆立ち尽くさなかった

    ★言い訳もしなかった

    ☆挑戦を諦めなかった


 ーーただ、もう1度前を向きました。



 彼は、知っていました。物語は、失敗した場所では終わらない事を。







 ーーやがて少年は、海を渡る。

 祖国と別れ、文化も言葉も違う街で、少年は1人の青年になっていく。



 ゴールを決めるたび、世界は彼の名前を覚えていく。


 けれど、彼自身は何も変わっていなかった。

 相変わらず照れ屋で、相変わらず人前は少し苦手で、インタビューでは落ち着かなかった。




 しかし、人生は、時に人を選ばないーー。





 
  ー人は、何かを手に入れるためだけに戦うのではない。大切なものを失わないために、何度でも立ち上がるー



 試練は、終わりません。

 アルゼンチンは、エジプト相手に、2点のビハインドを背負います。


 39歳。

 若手に次のバトンを渡す年齢ーー。


   ☆ワールドカップ優勝

   ★チャンピオンズリーグ優勝

   ☆バロンドール8度受賞


 ーーそれでも、彼は失敗と挑戦を繰り返しながら、前を向いていた。



 何故でしょうかーー?


   ☆記録の為ではない

   ★名声の為でもない


 彼には、もっと大切なものがありました。



 「信じてほしい。」

 4年前、彼自身が祖国へ送ったその言葉です。







 ーーキャプテンになれば、誰より先に話さなければならない。

 世界一になれば、世界を代表しなければならない。


 勝った日も。負けた日も。涙を流した夜も。

 沈黙では、守れない人がいることを、彼は知ってしまった。




 だから彼は、少しずつ、言葉を覚えた。

 自分を飾るためではない。

 誰かを、支えるために。


 「信じてほしい。」

 その一言は、もともと饒舌な人間の言葉ではないーー。






  ー人は、性格を変えることで大人になるのではない。変わらない自分のまま、誰かの希望を背負えるようになった時、人は大人になるー



 試合は、動きます。

 アルゼンチンが、1点を返します。


 そして迎えた、その瞬間。

 ボールは再び、彼の左足に届く。


 様々な感情が交差する中も、彼の左足は、いつものようにボールを捉えます。

 そして、ネットが揺れる。




 そこにあったのは、ゴール以上に美しいものでした。

 PKを外した男が、もう1度ボールを要求する姿。


 人は、成功した時に、勇気を証明するのではありません。

 失敗した瞬間に、もう1度前へ進む事で、勇気を証明するのです。







 ーーずっと言葉が苦手だった男が、何年、否、十数年掛けて、ようやく辿り着いた一言だった。

 だから世界中の人々の心に、届いた。



 私は、思う。


 彼が世界一になったのは、左足のおかげかもしれない。

 しかし、世界中から愛されるようになったのは、人として成長したからだと。



 内向的だった少年は、外交的な男になったのではない。

 内向的なまま、世界中の期待を背負える男になった。


 それが、少年が青年になり、大人になるということなのかもしれないーー。








  ー彼が世界に残したのは、伝説ではない。「失敗しても、物語は終わらない」という、1つの希望だったー



 試合終了。

 アルゼンチンは、逆転勝利をしました。


 彼は、涙した。

 あの涙は、勝利の涙ではありませんーー。


   ★少年の頃「成長できない」と言われた夜

   ☆2016年祖国を離れようとした夜

   ★2021年最愛のクラブを離れなければならなかった夜

   ☆2022年「信じてほしい」と願った夜

   ★2026年再び世界の期待を背負った夜


 ーーその全てが1つになり、涙となった。





 世界中の子ども達が、メッシに憧れる理由は、ドリブルでも、パスでも、シュートでもありませんーー。


   ☆39歳になっても、PKを外し

   ★39歳になっても、もう1度ボールを要求し

   ☆39歳になっても、自分でゴールを決める


 ーーその姿に、人間を、人生を、観るからです。




 彼は、神ではありません。

 だからこそ、世界中の子ども達は、彼を信じられます。


 失敗してもいい。

 もう1度立ち上がれば、物語は終わらないのだと。







 ーー彼が、世界に残したもの。

 それは、何度失敗しても、もう1度ボールを蹴る勇気だ。


 内向的な少年は、世界一の選手になった。

 そして今、世界中の子どもたちに、夢を見る理由を残している。


 リオネル・メッシ。

 彼の物語は、まだ終わらない。