何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安である2

 現代は、芥川の遺言通り、唯ぼんやりした不安を抱える時代です。

 生涯の中で不安障害の症状を抱える人の割合は、4人に1人とも言われています。

 

 不安への対処方法の1つに、未来を現在に近づけるというものがあります。

 ここでいう未来とは、実際の時間の流れの事ではありません。

 未来の自分と、現在の自分の心理的な距離が、どれだけ近いかを意味しています。

 

 時間の心理的な距離の問題については、いくつか面白い実験があります。

 2009年スタンフォード大学が行った実験において、自己連続性チェック尺度で被験者の時間感覚を調べたうえで「今15ドル貰うのと、1週間後に30ドル貰うのと、どちらがいいか?」と尋ねました。

 この実験によりわかったのは、未来との心理的距離が近い者程不安に強く、セルフコントロール能力も高いという事でした。

 また、自己連続性が高い者程、貯金額が25%多いという結果も出ています。

 つまり、自己連続性が高い、現在の自分と未来の自分との心理的な距離が近い人は、目の前の誘惑に負けないメンタルを持っている事が、上記の実験から理解出来ます。

 実験を主催したブライアン・ナットソンは「自己連続性の高さとは、未来の自分の身になって考えられるという事だ。その為、現在の決定が未来に及ぼす影響を実感出来るようになる。」とまとめています。

 

 ダイエットを例にとり、考えてみましょう。

 ダイエットで体重を落としたいけれど、目の前のケーキも食べたいといった状況の時、未来の自分への心理的距離が遠いとダイエットに成功した自分の姿が想像出来ず、未来が絵空事のように感じてしまいます。

 その結果、つい目の前のケーキに手が伸び、ダイエットは失敗します。

 ところが、未来の自分への心理的距離が近いと、ダイエットに成功した自分の姿にリアリティが生まれ、未来のメリットを現在の自分との繋がりとして捉える事が出来ます。

 これにより、目の前のケーキを控えるモチベーションが高まり、ダイエットに成功します。

 これが、心理的距離により、メンタルが強くなるメカニズムです。

 

 この思考方法は、ダイエットに限らず、どのような場面にも当てはめる事が出来ます。

 私は、中学生の頃から漠然と「かっこよく生きたい。」と考えていました。

 その為、信長ならこっちを選択するな、龍馬ならこれはしないな、槙島ならこの言葉を選択するな等、憧れの人物ならしそうな事、又はしそうもない事というのが常に脳の中にあり、それを意思決定の指針の1つにしてきました。

 これも現在の自分と、未来の自分との心理的距離を近づける為の1つの方法だったのかもしれません。

 

 自己連続性を高める、現在の自分と未来の自分との心理的距離を近づければ、芥川の言う唯ぼんやりした不安は生まれにくくなります。

 つまり、未来を現在に近づける事が、現代人が抱える不安に対抗する為の、有効な対抗手段と考えます。