ーー世界は、彼を見ていた。
けれどその日、彼が見ていたのは、1人の少年だった。
日本の少年は、震えながら質問をした。
日本語ではない、ポルトガル語で。
少年のポルトガル語は、完璧ではなかった。
会場の一部からは、笑いが起きた。
その時、彼は少年ではなく、笑った大人達の方を見た。
そして、静かに言った。
「なぜ、笑うんだ?彼のポルトガル語は、素晴らしいじゃないか。」
会場は、静かになった。
世界最高の選手が守ったのは、自分の名誉ではなく、挑戦した1人の少年だった。
ロナウドは、知っているから。
人が笑われるのは、失敗した時ではなく、挑戦した時だということを。
なぜなら、ロナウド自身が、何度も笑われながら、ここまで来たから。
小さな島で生まれた少年は、世界の頂点に立った後も、忘れていなかった。
挑戦することの怖さを。
そして、挑戦することの尊さをーー。
ー彼は、世界一になる為に故郷を離れたのではない。夢を諦めない自分でいる為に、故郷を離れたー
ロナウドは、ポルトガルの小さな島で生まれます。
家は、裕福ではありませんでした。
父は用具係、母は料理人。
世界の中心から遠く離れた場所で、少年は、ボールを追い続けました。
少年の夢は大きかった。世界一の選手になる。
その夢は周囲から見れば、あまりに無謀な夢でした。
けれど少年は、知っていた。挑戦しなければ、届かない事を。
だから、少年は、故郷と、さらには家族と、離れる決断をします。
まだ12歳の少年が、寂しくないわけも、怖くないわけもありません。
ロナウドの物語を知ると、この挑戦は世界一になる為というよりも、夢を諦めない為の挑戦だったのかもしれないと読む事が出来ます。
ーー挑戦とは、準備が整ってから、始めるものではない。
挑戦とは、不安を抱えたまま、始めるものだ。
12歳の少年は、その一歩を踏み出した。
2004年。
母国開催のEURO。
18歳の少年は、涙を流していた。
あと一歩だった。しかし、届かなかった。
その夜、トロフィーは彼の手にはなかった。
けれど、未来は、彼の方を見ていた
。
クリスティアーノ・ロナウドという1人の男をーー。
ー彼が守ったのは、少年ではない。その少年の勇気だったー
世界は、彼を知りますーー。
☆マンチェスターで、羽ばたき
★マドリードで、歴史となり
☆トリノで、挑戦を続け
ーーそして、再び世界へ飛び出した。
人々は、彼を怪物と呼びました。
しかし、彼はメッシとは異なり、生まれた時から、怪物だったわけではありませんーー。
☆誰よりも、走り
★誰よりも、鍛え
☆誰よりも、悔しがった
ーーこの積み重ねが、彼を世界の頂点へと連れていきます。
勿論、その道は、平坦ではありませんーー。
☆2006年
★2010年
☆2014年
★2018年
☆2022年
ーーワールドカップ優勝という夢は、何度も遠ざかります。
世界は、言いますーー。
★メッシには、勝てない
☆大舞台で、結果を出せない
★もう、終わった
ーー挑戦する人は、評価されます。
そして、それと同じくらい、笑われます。
彼は、その両方を、誰よりも知っている。
だから、あの日の少年を守った。
挑戦する事が、どれだけ勇気のいる事なのかを知っているから。
ーー多くの人は、夢を叶えられなかったことを悔やむ。
彼は、違う。
夢を叶えた後も、さらに先を見た。
もっと高く。もっと遠くへ。
だから彼の物語は、サッカーの物語ではない。
挑戦の物語だ。
彼が残したのは、ゴールではない。トロフィーでもない。記録でもない。
「もう無理かもしれない」
そう思った日、その先へ進む勇気だ。
世界中の子どもたちは、今日もボールを蹴る。
そして大人達もまた、諦めそうな夢に手を伸ばしている。
その理由のどこかに、1人の男の生き方がある。
その伝説の名前を、世界は知っているーー。
ー強さとは、勝ち続けることではない。挑戦する側に、立ち続けることだー
多くの人は、強さを誤解しています。
強い人とは、勝つ人ではない。
強い人とは、挑戦した人を笑わない人。
強い人とは、転んだ人に石を投げない人。
強い人とは、まだ途中にいる人を信じられる人。
彼は、それを知っていました。何故なら、彼自身がーー
☆何度も、途中だったから
★何度も、失敗したから
☆何度も、立ち上がったから
ーー挑戦を続けてきた人だけが、その過程で強さを手にする事が出来るのです。
2026年。
41歳になった少年は、再びワールドカップに、挑戦します。
普通なら引退している年齢。
だが、彼は走る。彼は鍛える。彼は、誰よりも悔しがる。何故だろう?ーー
☆記録の為だろうか
★名声の為だろうか
ーー私は、違うと思います。
彼は、ずっと同じ事をしています。
挑戦する側に、立ち続けている。
笑う側ではなく、見下ろす側でもなく、いつだって一歩踏み出す側に。
ーーそして、どうやらこの物語も、まだ完結していない。
2026年。
彼は、再び世界一に挑戦しようとしている。
黄金世代(ゴールデンエイジ)を超える逸材が集まったポルトガル代表。
夢半ばで、突然別れることになってしまった仲間の思いも乗せて。
今日、ボールを蹴れること。
今日、仲間といられること。
今日、挑戦ができること。
その全てが、奇跡なのだ。
世界中の子どもたちは、今日もボールを蹴る。
そして大人達もまた、新しい仕事に挑戦し、子育てに挑戦し、新しい人生に挑戦している。
失敗するかもしれない。笑われるかもしれない。
それでも、前に進む。
その理由のどこかに、1人の男の生き方がある。
世界は、彼のゴールを覚えている。
しかし、彼が本当に残したものは違う。
挑戦する人を笑うのではなく、守ること。
その伝説の名前を、世界は知っている。クリスティアーノ・ロナウドーー。