漱石と猫
「そんなに入ってくるなら、置いてやればいいじゃないか。」
1904年文京区に住んでいた夏目邸に1匹の子猫が迷い込んできました。
猫嫌いの妻は、「何度も猫をつまみ出すけれど、いつのまにか家の中にいる。」と語っています。
ある時は布団の中に潜り込み、ある時はテーブルの上に座っています。
事情を知った漱石は、「追い出しても追い出しても来るってことは、この家が余程気に入ったんだろ。」と猫を飼う許可をしました。
主人の許可を得たとばかりに、猫は大威張りで新聞を読んでいる漱石の背中に乗っていたそうです。
猫と暮らす中で漱石は少しずつ穏やかな日々を取り戻していきました。
漱石は若い頃から神経障害を患い、希望していない教師の職に就き、さらにイギリス留学で神経障害に拍車がかかり弱っていました。
家族はいつ漱石が癇癪を起すか、気を病んでいました。
そんな時に猫が迷い込んできたのです。
猫の気ままな姿を見て、「猫はいいなあ。猫になりたい。」という思いから出筆したのが『吾輩は猫である』でした。
「軽妙で面白い。今までにない小説。」と評判を呼び、漱石は作家として生きていくことが可能となりました。
日本を代表する文豪を生んだのは、猫の力によるところが大きいのかもしれません。