人は、脳が事前に作り出した物語を生きている

 今日あなたが玄関のドアを開けて、家を出た時に見えた世界のことを覚えていますか?

 ほとんどの方は、覚えていないのではないでしょうか。

 仮に、玄関を開けた途端、見知らぬ人に出くわした等の普段とは異なる世界が存在していたのなら覚えていると思います。

 旧来では、周囲の映像や音声等を目や耳等の感覚器官が受け取る→インプットされた情報が脳の高次エリアに送られる→全ての情報を脳が処理したら後で最終的な判断が行われるという手順により、私達は行動を選択していると言われてきました。

 しかし、これでは説明出来ない部分が多々あります。

 たとえば、スポーツにおいて、脳が処理するよりも、サッカーや野球、テニス等は、ボールに対して反応をしなければなりません。旧来の脳の処理手順ですと、ボールがくる方が早く、そのボールに反応すことが出来ない計算になります。また、全ての事柄に脳が反応していたら、脳のキャパシティがいくらあっても足りません。

 最新の科学では、旧来の考え方が否定されています。

 周囲の状況がどう展開するかについて、事前に脳が物語を作る→感覚器官が受け取った映像や音声の情報を脳の物語と比較する→脳の物語が間違っていた部分のみ修正して現実を作るという手順により、私達は行動を選択しています。

 つまり、玄関のドアを開けて見えた世界がいつもと変わらない世界であれば、脳はそれに反応せず、過去に描いた物語を私達に見せているのです。

 何度も入力されたデータに対し、脳は「いつもと同じだろう。」と推測して過去の情報を使いまわしています。

 その方が、脳のエネルギーを無駄に消費せずに済みます。

 脳が事前に作った物語が現実の情報と同じ場合、脳は外界から取り入れた情報を使わず、最初に高次領域が作った物語を、そのまま採用しています。

 一方、玄関を開けたら見知らぬ人がいた場合等、事前に作った物語と、現実が異なる場合には、間違った情報のみが高次領域に送られます。

 見知らぬ人がいたというデータのみ高次領域にフィードバックされ、この情報を基に、脳は「この人は危ない人かもしれない。」「話しかけてきたらどうしよう。」等といった新しい物語を展開します。

 この為、玄関を開けた世界がいつもと同じ世界であった場合、私達は覚えていませんが、その世界がいつもと異なる世界、つまり脳が事前に作る物語と異なる場合のみ覚えています。

 私達は、ほとんどの場合、自らが選択した世界を見ているのではなく、脳が事前に作り出した物語の中を生きています。