変わったのは日本代表ではなく、私だったのかもしれない3ー日本代表の「あと少し」は、戦術ではなく文化にあるー






   ♦歴史は、組織の外側から動き始める



 私は昨日「あと少しで勝てた」というブログを書きました。

 では、その「あと少し」とは何なのか?

 今日は、その「あと少し」を、紐解きたいと思います。







 ーー世界を変える選手というのは、整った組織の中から生まれるのだろうか?

 それとも、整った組織を一瞬だけ裏切る勇気から生まれるのだろうか?



 サッカーはいつも、最後の数メートルで、残酷になる。

 そこは、戦術が届かない場所だ。監督の声も届かない場所だ。


 そこに届くのは、自分の判断だけだ。

 


 日本はもう「弱い国」ではなくなった。

 だが同時に「世界を動かす国」ではない。


 その差は、ほんの一歩。

 私は、その一歩は個人の中にあるが、その一歩は組織により、殺されることになる一歩であると思う。


 命令に従うことと、命令を超えること。

 その境界線の上に、次の日本代表は立たされているーー。







  ー組織は世界に届く。歴史を変えるのは、いつも組織を一瞬だけ超えた1人であるー
 


 ブラジル戦、日本は組織的でしたーー。


   ★プレスの開始位置を揃える

   ☆ボールを奪ったら、素早く縦へ

   ★相手のミスを待ち、隙を突く


 ーーこれは、森保監督の大きな成果です。



 しかし試合を分析すると、日本代表が「自分達のリズムで相手を動かす時間」が、殆どなかった事がわかります。

 つまりブラジル戦は、日本がブラジルにコントロールされながら、その中で勝機を探していた試合でした。



 森保監督はーー

    ★規律

    ☆献身性

 ーーを非常に重視します。


 一方で、世界を変える選手とは「監督の戦術を超えてしまう選手」ですーー。


     ☆メッシ

     ★ハーランド

     ☆エムバぺ

     ★ヴィ二シウス


 ーー彼らはチームの一員でありながら「ここは、俺が変える」という瞬間を、持っています。


 日本戦でも、ヴィ二シウスはボールロストを繰り返し、戦術的にも彼の特性的にも輝く事が出来ないにも関わらず気分で中に入る事が多かったにも関わらず、90分の中でたった1度彼にしか出来ない突破を見せ、そのたった1度が日本代表の脅威になり続けました。



 彼らにあるのはーー


   ☆戦術の中にいるが、戦術の外にも出られる

   ★不利な局面を、1人でひっくり返せる

   ☆組織が詰まった時の、例外になれる


 ーー彼らに共通しているのは「チームが機能している時に輝く」のではなく「チームが詰まった時に試合そのものを別のゲームに変えてしまう力」です。






 ーー監督は、チームを作ることができる。

 走れるチームを。秩序のあるチームを。信じあうことができるチームを。


 だが、監督が作れないものがある。

 監督の想像を超える選手である。



 歴史を振り返れば、世界一になったチームには、必ず監督の設計図からはみ出した選手がいた。

 その一歩が、戦術を、歴史を変えていくーー。






  ー組織は、勝利を作る。ただ歴史を変えるのは、組織の中で、自ら考える勇気を失わなかった1人であるー



 戦国時代、織田信長は黒田官兵衛が裏切ったと判断し、官兵衛の嫡男・黒田長政を処刑するように命じました。

 しかし、竹中半兵衛は、その信長の命令に従いませんでした。


 官兵衛なら、ここで裏切らない。

 もし裏切るのであれば、もっと良い局面で裏切ったはずだ。


 同じ軍師として、軍師としての官兵衛を信じた半兵衛は、自分で判断し、官兵衛の子・長政を匿います。

 その結果、半兵衛亡き後も官兵衛は秀吉を支え、黒田家は大大名となり、命を救われた長政は現在の福岡を築きます。

 そして、黒田家は半兵衛への恩を忘れず、竹中家を支援し続け、竹中家は江戸時代まで残る家となりました。




 

 「意見を言う選手」「輪を乱す選手」は、同じではありません。


 森保監督は、以前公に森保批判をした、否、森保監督に意見を言った守田を代表から外しました。

 勿論、外部から見える情報だけではなく、戦術・コンディション・チームバランス等、複数の要因があっての選択だったと思います。


 心理学には「集団浅慮(グループシンク)」という考え方があります。

 組織の結束が強過ぎるとーー


   ★誰も異論を言わない

   ☆リーダーの考えが絶対になる

   ★新しい発想が生まれない


 ーーという現象が生まれます。



 逆にイノベーションを生む組織には「心理的安全性」があり、メンバーが監督や上司に異なる意見を伝えられる文化があります。

 つまりーー


   ★規律は必要

   ☆統率も必要

   ★ただ異論まで排除すると、創造性も失われる


 ーーというバランスが重要です。




 そしてサッカーには、さらに難しい特徴があります。

 守備は、組織で完成に近づける事が出来る。しかし、攻撃の最後の1歩は組織では作れない。


 世界最高レベルになるとーー


   ☆そこへパスを出すのか

   ★そこでシュートを打つのか

   ☆そこを抜くのか


 ーーという常識を破る選手が試合を決めます。




 そういう選手は、子どもの頃から「言われた事だけをやる」よりも「自分で考える」「自分の判断を貫く」経験を積んでいます。

 そして、日本と異なり、その経験を、大人が排除しないという文化があります。

 だから私は、日本サッカーの「あと少し」は、戦術よりも文化にあると考えています。



 規律を守れる選手を育てる事と、監督にも意見を言え自分で試合を変えようとする選手を育てる事は、両立出来るはずです。

 本当に強いチームとは、全員が同じ考えを持つチームではなく、異なる考えをぶつけ合った上で、1つの方向に進めるチームなのかもしれません。


 これはサッカーだけに限らず、会社・学校・子育て等、どのような組織にも通ずる部分です。







 ーー竹中半兵衛は、命令に逆らったのではない。

 組織の未来を、守ったのである。


 本当に強い組織とは、命令に従う人だけで作られるものではない。

 考える人がいる。異論を唱える人がいる。


 そして最後は、全員が1つになる。




 もし全員が「上が言ったから」で終わるのなら、管理職も、参謀も、キャプテンも必要ない。

 歴史を動かすのは、命令ではない。


 考え抜いた1人の判断なのであるーー。