幸福とは、心が現実に誠実であることー「感じたい感情」と「感じている感情」が重なる時、人は自分らしく生きられるー
ーー幸福とは、何だろう?
私たちは長い間、その答えを外側に求めてきた。
収入が増えれば幸せになれる。良い仕事に就けば満たされる。愛する人と出逢えれば幸福になれる。
もちろん、それらは人生を豊かにする。
私は、幸福を決めるものは、もっと静かで、もっと内面的なものではないかと思う。
それは、心が現実に対して、誠実に反応できていることである。
喜ぶべき時に喜び、悲しむべき時に悲しみ、怒るべき時に怒る。
そんな「心と現実の一致」が、幸福の土台になるのではないだろうかーー。
♦幸福は、心の矛盾がない時に生まれる
幸福について考える時、多くの議論は「どのような出来事が、人を幸せにするのか」に向かいますーー。
★収入・健康・人間関係
☆仕事のやりがい
★自由な時間
ーーこれらは確かに、幸福に影響を与える重要な要素です。
しかし、同じような環境にいても幸福を感じる人と、幸福を感じない人がいる事を考えると、幸福は外的な条件だけでは説明が出来ません。
私は、幸福を理解する上で重要なのは「感じたい感情」と「感じている感情」との関係ではないかと、考えています。
ーー人は、出来事を生きているわけではない。
出来事を通して生まれる、自分自身の感情を生きている。
嬉しい出来事に出会えば、喜びを感じる。努力が報われれば、達成感を覚える。信頼している人に裏切られれば、怒りや悲しみが湧き上がる。
それは、どれも心が現実に対して返す、ごく自然な反応である。
そこには「この状況なら、きっと私はこう感じる」という、自分なりの感覚がある。
その感覚と、実際に心に生まれた感情が重なる時、人は自分自身に違和感を抱かない。
自分の心は、現実に対して、誠実に反応している。
その静かな確かさが、自分の内側と外側が繋がっている感覚を生み出すーー。
ー幸福とは、心が現実に誠実であり、自分がその感情に誠実でいられることであるー
私達は日頃より、自分では意識していなくても「この場面ではこう感じたい」という期待を持っています。
たとえばーー
☆旅行に行けば、楽しい気持ちになりたい
★努力が報われたら、達成感を味わいたい
☆家族と過ごす時間は、安心していたい
ーーところが現実には、旅行中に不快な人に出会ったり、努力が報われても達成感を感じられなかったり、家族といても不安を感じる事があります。
この時苦しいのは、単に「不安だった」「楽しくなかった」という事だけではありません。
「本当はこう感じたかったのに、そう感じられなかった」というギャップが、私達に違和感や不満を生み出しているのです。
興味深いのは、この考え方は、ネガティブな感情にも当てはまるという事です。
たとえば、自分や自分の大切な人が、理不尽な対応を受けたとします。
その時、怒りを感じるのは、自然な反応です。
怒りは、決して心地よい感情ではありません。
しかし、その場面で怒りを感じられるという事は、自分の価値観と現実とが一致している事を意味します。
つまり「この状況なら怒りを感じるはずだ」という自分の認識と、実際に怒りを感じている自分とが重なっている状態です。
勿論、その怒りをそのまま相手にぶつければ良いという話ではありません。
怒り方は伝え方には、配慮が必要です。
しかし、だからといって怒りそのものを否定する必要はありません。
寧ろ、その怒りを自分の価値観を守る為に、適切な形で相手に伝える事は、自分の内面と現実を一致させる大切な営みでもあります。
怒るべき場面で怒りを感じ、その感情を自分自身が認める事により、人は「心が現実に誠実に反応している」という感覚を得る事が出来ます。
その感覚は、自分の内面と現実の一致をもたらし「自分らしく生きている」という、静かな確認に変わっていきます。
そして、この積み重ねこそが、私達の深い幸福感を支えていく事になります。
ーー理不尽な出来事に、怒りを覚える。その怒りは、気持ちのいいものではない。
しかしその怒りは、自分が大切にしている価値観が傷ついたという、心からの知らせでもある。
その時「この状況なら怒りを感じるはずだ」という自分の認識と「実際に怒りを感じている」自分が重なる。
そこには、自分の心と現実の間に矛盾はない。
私たちは、時に感情そのものよりも、その感情を否定することで苦しむ。
怒ってはいけない。悲しんではいけない。平気でいなければならない。
そうして感情を押し込める度に、心は現実との接点を失っていく。
外では笑っていても、内側では泣いている。平気なふりをしていても、本当は傷ついている。
そのズレは少しずつ広がり、自分でも自分が何を感じているのか、わからなくなってしまう。
幸福を遠ざけるのは、ネガティブな感情ではない。
現実に対する自分の自然な感情を否定し、心と現実との一致を失ってしまうことなのかもしれないーー。
この続きは、また後程。