物語に、人生が追いつくー物語を観ていたはずが、自分の時間を見ていたー





 ーーきっと物語が、私たちを待っているのではない。

 私たちの人生が、いつか物語に追いつくのだと、思う。



 『ディズニー・オン・アイス』は、子どもに夢を見せる時間だった。

 それと同時に、昔の自分に、もう1度出逢う時間でもあった。



 氷の上を、物語が滑っていく。

 そして、その物語の向こう側に。



 子どもの頃の私と、今の私と、その間に流れた時間が、静かに重なっていたーー。








  ー物語は、私たちを変えない。私たちが生きてきた時間によって、物語の中に見えるものが変わっていくー




 昨日『ディズニー・オン・アイス』を、観ました。


 子どもの頃に夢中になっていた物語を、今度は、大人になった自分が観る。

 そして、大人になった私の隣には、子どもがいる。




 私は、不思議な感覚でした。氷の上では、昔と同じようにーー



   ☆夢が、始まり

   ★主人公が、迷い

   ☆誰かと、出逢い

   ★困難を、乗り越えていく



 ーー物語そのものは、何も変わっていません。

 ただ、同じ物語を観ている私自身が、子どもの頃と、変わっている。





 子どもの頃は、主人公がどうなるのかが、気になっていましたーー。



   ☆幸せに、なれるのか

   ★夢は、叶うのか

   ☆悪いことは、最後には終わるのか



 ーー物語を「これから、起こること」として、観ていました。

 けれど、大人になった今は違うーー。



  ☆彼が、彼女が、選ばなかった道はどこへ消えたのか

  ★そこに立つために、何を失ったのか

  ☆彼の、彼女の幸せの裏で、誰が何を置いてきたのか



 ーー同じ物語を観ていても、子どもの頃と、物語の意味が変わっています。








 ーー氷の上を滑っていたのは、ディズニーのキャラクターだけではなかった。

 あの頃の私も、ほんの少しだけ、氷の上を滑っていた。



 そして、今の私は、その姿を、少し遠くから見ていた。

 時間は、人を過去から連れ去る。



 でも時々「思い出」という形で、過去を連れ戻してくれるーー。







 
  ー人は、物語を何度も観るのではない。生きてきた時間の分だけ、同じ物語を、何度でも違う場所から観るー

 


 子どもの頃には、ただの「悪役」だと思っていたキャラクターにも、時間があった事に、気づく。

 子どもの頃には、ただの「親」だと思っていたキャラクターにも、迷いがあった事に、気づく。



 そして、子どもの頃には「家族」というものは、当たり前に、ただそこにあるものだと、思っていた。

 けれど大人になった今、その日常の1つ1つが、諦めや、言葉にされなかった思いや、積み重ねてきた時間の上にある事に、気づく。





 大人になるという事は、同じ物語の中に、以前は見えなかったものが見えるようになる、という事なのかもしれない。



 だから私は、子どもの頃に観た物語を、大人になってもう1度観る事には、意味があると、思っています。

 物語を見直しているようで、本当は、自分自身を見直しているーー。



   ☆子どもの頃は、ただその場面が好きだった

   ★今、子どもの頃にはなかった意味が、増えている



 ーーその違いの中に、これまで「生きてきた、時間」が、あるーー。



  ☆子どもの頃は、夢が大切だった

  ★大人になると、夢を持ち続ける難しさを知る



  ☆子どもの頃は、家族は最初からそこにあるものだった

  ★大人になると、家族とは毎日選び続けた結果だと知る



  ☆子どもの頃は、幸せは最後に辿り着く場所だった

  ★大人になると、幸せはそこに向かう途中にあると知る




 ーーそして、その物語を、今度は、子どもが観ている。

 子どもは、きっとまだ「魔法」を、観ている。




 でも、子どもも、いつか大人になる。

 その時には、今日観た物語の中に、今はまだ見えていないものを、見つけるだろう。


 そして、その時には、今日という1日そのものが、物語の一部になっている。

 そう考えると、子どもと一緒に物語を観るという事は、子どもの思い出を作る為だけではない。




 自分自身の過去に、もう1度、新しい意味を与えているーー。



   ☆昔見た物語を、今の自分が観る

   ★今の自分が、子どもと一緒に観る



 ーーそして、子どもが大人になった時、また別の意味で思い出す。


 


 物語とは、1度観て、終わるものではありません。

 人生を重ねる度に、違う場所から、もう1度観る事が出来ます。


 『ディズニー・オン・アイス』で観たのは、昔から知っている物語でした。

 けれど本当は、私に映っていたのは、物語だけではなかったのかもしれないーー。



   ☆あの頃の、私

   ★今の、私

   ☆今、私の隣で観ている子ども



 ーー1つの物語の中に、それぞれの時間が、重なっていました。